上映プログラム「マルチチュードの身振り」
「マルチチュードの身振り」
「ぼくたちがたびたび議論してきた唯一の領域であるこの抽象の領域において、どうやったら出来事を構築できるのか、あるいは、単純に、どうやったら出来事を思考することができるのか。(中略)どうやったら存在の超過に接近することができるのか。その待機に、その実現に。」
マルチチュードという概念は、アントニオ・ネグリによるこの世界の表現であり、だが自らがマルチチュードと表現するこの世界にネグリもまた規定されている。表現するということは、思いに耽るだけでは足りず、また観察に耽るだけでも足りない、絶えず片方を中断しもう片方へと向かうそのくり返し、内省と傾注の間を絶えず行き来するそのくり返しなのだ。それは逃れられないことであるがゆえに途方もない労苦であり、まただからこそ表現することの自恃の念ともなりうる。
ここに紹介するのは、そのような内省と傾注との往還が、結果としてマルチチュードの諸形式をわれわれに垣間見せてくれる作品である。「自転車で行こう」では、主人公が共同体のルールを逸脱していることと、彼を「媒介」としたネットワークが機能していることとの間にある奇妙な矛盾が、杉本の戸惑いを隠さない制作態度によって描き出されていく。一方ジョナス・メカスは撮影からある程度の期間を置くことで、1秒24コマという否応のない時間の均質化のうちに開かれたイメージ、他のどの日とも、どの瞬間とも変わらないその日、その瞬間のうちに開かれたイメージをスクリーン上に横溢させてみせる。これらはつまり、マルチチュードの身振りそのものであり、この世界と映像表現とに対峙する、カメラを構えた、またカメラに規定された生であるのだ。
上映作品
「自転車で行こう」(3月29日(土)19:00~、3月30日(日)16:00~)
「富士山への道すがら、わたしが見たものは…」(3月29日(土)15:00~、3月30日(日)18:00~)



